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『それでも花は咲いていく』で前田健さんを偲ぶ

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「人を誉めるなら生きてるうちに」(ザ・ハイロウズ「死人」より)が原則であり、人の死を元にブログのアクセス数を稼いでしまうというのは不本意だが、昔読んだ本がとてもよかったので、これを機会に偲びたいと思う。

神様―。僕は病気ですか?僕はゴミのように燃えてなくなればいいですか?たとえ人は変態と言おうが、それでも花は咲いていくのだ。九つの花に託された九人の人間、それぞれの衝撃的な性的魂の行方とは。タレント前田健による処女小説。

インターネット、SNSが流行ってくると、いわゆる「変態」と呼ばれるような性癖が「ネタ」としてでてくることも多い。私はそういうことは大いに楽しめるタイプなのだが、「俺ロリコンなんで〜」とか「俺ホモなんで〜」なんてネタが、年齢も30すぎて女っけナシの独身生活を送っていると、周りの知人らにもお子さんができたり、私周辺の人らにいろいろ心配されたりするような状況になってきて、「シャレにならない」という状態になってくるのである。

そういう状況のなかで、「本気で苦しんでいる方々」を知ろうとしていた時期があった。例えばあの「やらないか」経由でたどり着いて「薔薇族」の編集長、伊藤文学氏のブログ ( 伊藤文学のひとりごと ) であったり、ロリコン、二次コンを本気で治そうとしている方々であったり、である。どれもこれも普通の恋愛すらしたことのない私にとっては生々しくて気の遠くなるような話ばかりであった。

そんななか、この本を手に取る機会があった。前田健さん自身が「ゲイである」ということは公表済みであったし、文学作品の短編集ということで、さらりと読めた。これが取材によって書かれたのかわからないし、直接的な言葉、表現を避けるようなエログロとは遠い「文学」であったが、いろいろと視点を得ることができて本当におもしろかったことを覚えている。

とても、多才な方であったようで、大活躍されてらっしゃったようだ。本が売れなかったのか、多才すぎたのか、これ以降文学作品は出されなかった。読みたかったなあ。

最初に読んでから10年立ってないようだが、私自身の年齢が進んだ後にこの本を読み返すと、また違った感想になるかもしれないし、10年以上たって、新刊を出されていたらどのような作品になっていたのだろうか、とても残念だ。

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